3 識別

サルの個体識別と植物の識別について紹介する。

3.1 植物の識別

識別の際によく使われる本屋サイトを紹介する。

1 樹に咲く花(山と渓谷社)
離弁花1、離弁花2、合弁花・単子葉・裸子植物の3冊1シリーズは重宝する。
2 屋久島の植物(著:川原勝征)
コンパクトにまとまっていてどの植物なのか全く見当がつかないときは便利。ステーションにおいてある。
3 樹木検索図鑑
植物の特徴(葉の付き方、鋸歯の有無、葉脈、樹皮など)がわかるが本で解決できないときに役に立つ(リンク)。

3.2 サルの個体識別

ここで挙げる例は識別できていない状態の人に向けた識別するうえでのヒントにすぎない。
識別が一番上達する方法は、

  1. とにかく真摯に対象動物を見つめ、
  2. スケッチ(似顔絵など)を描き、
  3. 写真を撮る。

このサイクルを続ける意外に上達する手段はない。識別ポイントは人によって違うことが多いので、他人がつくった識別情報はわからないことも多々ある。最後は結局自分自身で築き上げた判断基準から識別するしかない。
ここでは、筆者の研究対象であったニホンザルを例に個体識別の方法を説明していく。

3.2.1 個体の特徴を抑える

スケッチで書ける特徴を3つ、見つけてみよう。
特徴が1つだけだと他個体と同じ特徴である可能性がまだ高い、2つでも心もとない。3つ見つけられれば、全く同じ特徴をもった紛らわしい個体(性・年齢も似通った個体)はいないはずだ。

初心者レベル:識別表に書けること

  • 手足の指
  • 尾の長さ・曲がり具合
  • 身体の大きさ・太り具合
  • 乳首の長さ・ほくろの有無・左右の長さの偏り

中級レベル:識別表に書けないこと

  • 毛並み
  • 顔やお尻の色具合

上級者レベル

  • 歩き方
  • シルエット
  • 顔の雰囲気

3.2.2 個体識別の手順

慣れていない最初のうちは、持ち合わせている情報をフィルターリングすることで個体識別できる可能性がぐっと高まる。

  1. 群れ識別
  2. 属性分け
    1. 性・年齢クラス
      オス・メスの区別。アカンボウ・コドモ・ワカモノ・オトナの区別。
    2. 発情の有無
      季節性繁殖する動物では有効なことが多い。
    3. 子持ちの有無
      アカンボウの有無、子のきょうだい構成(性・年齢の組み合わせ)などから判断。
  3. 周辺個体情報
    よく近接している個体数のちがいや特徴をつかみやすい個体が近くにいるか等。アドリブサンプリングでとくかく近接個体を記録すると識別しやすくなる。

3.2.3 似顔絵を描く

裸眼もしくは双眼鏡で分かる特徴を似顔絵にする。写真よりも敢えて抽象度を上げることでどこに注目すればいいのかが分かりやすくなる利点がある。
似顔絵の見本

図3.1: 似顔絵の見本

3.2.4 写真を撮る

スマホはNG!
望遠機能がない、というのが一番の理由である。20-35倍の光学ズームができるとだいぶ識別するのに使える写真が撮れる。デジタルズームは画像が荒くなるので識別写真には不向き。

適当な写真は使い物にならない!
写真は同じようにとってもサルの印象が変わってしまう。自分が識別しているときの顔の印象は、写真を撮ると別人になっていることは往々にして起こる。写真は思ったほど簡単ではない。動画も同じ。