1 ニホンザルの体のふしぎ
ニホンザルには、ヒトにはない体の構造がみられる。
これらの構造はニホンザルにとってどのような意味があるのだろうか?
1.1 顔が大きくなるのはなんで?
ニホンザルは「頬袋」をもっている2。
この頬袋があるおかげで「ながら食い」ができる。
ニホンザルの仲間であるオナガザル上科のサル(旧称:旧世界ザル)は、オマキザル上科のサル(旧称:新世界ザル)や類人猿とはちがい、頬袋をもっている。この頬袋によって、果実を丸呑みするだけでなく、一時保存することもできる。一時保存できることで、移動や毛づくろいをしながら頬袋に貯めた果実を食べている。
この頬袋があることで種子散布の距離が変わるため3、植物にとっても無視できない重要な部位である。
新世界ザル、旧世界ザルという呼び名は植民地的なニュアンスがあることから今は使わないことが推奨されている。例えば、国際霊長類学会の公式学術雑誌であるInternational Journal of Primatology誌の論文投稿規定4(submission guidelines)では以下のように記述されている。
“Avoid the terms New World and Old World, which have colonial overtones. Use formal taxonomic terms (e.g., platyrrhine, catarrhine), American and Afro-Eurasian monkeys, or other appropriate terms”
1.2 お尻にあるコブは何?
ニホンザルは「尻ダコ」と呼ばれる突起物がある。
尻ダコは、オナガザル科と類人猿のテナガザル科の霊長類の坐骨結節に付着し,坐ることへの適応を高めていると考えられている7。
オナガザル科に属するニホンザルは、この尻ダコをクッションとして使えるおかげで、長いこと座っていられる。